平成24年10月2日にご逝去されました流通ジャーナリスト金子哲雄様のご葬儀は、ご縁があり弊社・江東区の<セレモニーみやざき>が執り行わせていただきました。金子様が見事にご自身の最期に取り組まれたご様子と、ご葬儀のお手伝いを通じて私・宮崎美津子が感じたことをご紹介させていただきます。
8月中頃、金子様よりお電話をいただき葬儀の話しを聞かせて欲しいとご依頼がありました。その後、私がご自宅を訪問し事前相談をさせていただきました。
仕事柄、日常的にご葬儀の事前相談を承っておりますが、通常はご家族やご親族の葬儀についてのご相談がほとんどです。お話に入る前に、どなたのご葬儀のご相談か金子様にお尋ねしたところ、『私です。私のお葬式です。』とおっしゃられました。
最初は、ご本人のご葬儀の打ち合わせに私も非常に戸惑いました。しかしながら、金子様の真剣な取り組みに私もお力添えすることに心を決めました。ベッドに横たわり酸素吸入をし、時折り咳き込む状態の金子様と一緒に葬儀プランを立てていきました。
41才の若さでご自分の最期を演出される事は、余りにも悲しく切ないご様子でした。しかし、その気持ちに負けること無く終末期を迎えられる人とは思えない程、ご本人は淡々とお話を進められました。金子様の強い意思に私も同じ目線で接し、金子様の思いを可能な限り実行できるようアドバイスをさせていただきました。勿論、奥様もご同意の上で準備を進めてまいりました。
先ず課題は、葬儀をどこで執り行うかでした。ご会葬の皆様にとって立地条件の整った式場を考慮しながら、とにかく金子様の要望に沿ってお話を進めてまいりました。その中でご自身が入るお墓も含め、考える必要がありました。お寺様は、私の菩提寺でもあります東京タワー近くの港区東麻布の心光院様をご紹介いたしました。金子様は偶然にも東京タワー近辺にはいっそうの思いがおありだったようで、縁の深いこの地でご自身のお葬式を行うことにとても共鳴されました。金子様は満面の笑みを浮かべ、『宮崎さん、僕 東京タワー大好きなんですよ。』とおっしゃいました。その後、奥様をお寺にご案内して墓地の供養塔やお寺の全てを見ていただきました。
8月末、心光院ご住職にお願いし、金子様と対面する機会を設けご自宅へ訪問させていただきました。その際に金子様は、ご住職が執筆された『寄り添いの死生学』を手に持ち『ご住職、読みましたよ。』と、にこやかに差し出されました。お互いに死生観や人生観など約1時間以上もゆっくりとお話しされていました。
その後も金子様は、私の携帯電話に度々質問されてきました。お世話になった皆様へのご挨拶状やおもてなしなど、可能な限り具体的にご準備を進められました。
10月1日(月)の午後9時頃、携帯電話に着信が入っていたので、金子様に折り返しの電話を入れました。すると『宮崎さん、もうお別れです。これでさよならです。』とおっしゃられました。私はいても立ってもおられず急遽ご自宅へ伺いました。
『宮崎さんお忙しい中ありがとうございます。もうお別れです。一ヶ月半、命をいただきました。ありがとうございました。』無言の私に『私の人生に悔いはありません。さよならです。あとはよろしくお願いいたします。』金子様の温かい手で、私の手を包んでくださいました。
<奇跡はないのか、神様どうかこの方を助けてください。>私は思わず心の中で叫びました。そして、その時が近いことを悟りました。臨終を迎える時まで、ご自身の成すべきことをきちっとこなし、旅立ちの支度を奥様とご一緒にされる気持ちを考えると、涙が止まらなくなり言葉が出ませんでした。
そして、日付が変わった翌10月2日(火)金子哲雄様は旅立たれました。
私が寝台車でお迎えに伺った時、すでに金子様は、トレードマークともいうべきスーツに着せ替えられておられました。オレンジ色のネクタイ・眼鏡、まるでこれからさっそうと仕事に出かけるかの様な出で立ちでした。
お通夜・ご葬儀は、ご本人の想像を超える程の会葬者で溢れ、告別式には参列された約300名近くの皆様にお花入れのお別れをしていただきました。
私はこの一ヶ月半、一人の青年の終末期を見届けさせていただきました。そのご縁を通じて、葬儀社としての在り方、人を送るという意味を新たに考えさせられました。
死への恐怖を少しでも克服できるのか?死を受け入れる為に何をすればよいのか?自分の逝き先を自分で決められるのか?
それぞれの立場や状況などにより様々な思いがあると思いますが、旅立つ方に寄り添う方の支えはとても大切だと感じました。金子様は奥様に支えられ、人としての尊厳を守られ、そして愛情を注がれて人生の幕を引かれました。金子様は見事に自分の逝き先を決められたのです。
流通ジャーナリスト金子哲雄様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。合掌
金子哲雄様の最後の<御挨拶>をこちらよりご覧ください。
平成24年10月2日にご逝去されました
流通ジャーナリスト金子哲雄様のご葬儀は、
ご縁があり弊社・江東区の<セレモニーみやざき>が
執り行わせていただきました。
遺作となった『僕の死に方』の中では、
弊社の事を実名で記していただきました。
ご葬儀をご依頼いただいた上に、ありがたいお言葉を
頂戴いたしました事に、心より感謝しております。